この記事では、ブログ名「毎日が定時退庁日」に込めた思いについて、説明させていただきます。
世間では「仕事が楽」「9時-5時で帰れる」「残業ない」といったイメージをされがちなお役所ですが、残業が月200時間を超えるような部署もあります。
うちの夫も国家公務員時代には月200時間、転職した某都道府県庁でも繁忙期は月100時間超の残業はざらでした。今はワークライフバランス、働き方改革と称し残業削減に向かっていますが、まだまだ長時間労働が常態化している職場は存在しています。
目次
定時退庁日とは
そんな長時間労働を是正する目的で、役所において職員が一斉に定時で帰ることを促すことを設定した日を定時退庁日といいます。
しかしながら、この定時退庁日、形骸化している職場がほとんどではないでしょうか?
定時退庁日は10年以上前からありましたが、メールや庁内放送で「本日は定時退庁日です。定時になったら速やかに退庁しましょう」といったアナウンスを流す程度でした。
私は公務員時代、定時退庁日だから定時で帰ろうとした時「ほんとに帰るんだww」と笑われたことがあります。さすがに今は面と向かってそんな態度をとる人は少ないとは思いますが…
現在は取組みを強化しようということで、一斉に照明を消灯する、パソコンを自動的にシャットダウンする、管理職が退庁を促す声かけを行うなどの取組を各役所において実施しています。
形骸化した定時退庁日。なぜ残業はなくならないのか…
この定時退庁日の取組みを長年続けていること自体、普段は長時間労働をするのが当たり前という意識を職員に植え付けてしまっているのではないかと考えています。
実際に役所で働いて感じたことは、遅くまで働くことが善とされる文化が根強く残っているということです。長時間の会議、夕方からの幹部レク、夕方に調査依頼がきて〆切は翌朝といった無茶な発注、いずれも残業を前提とした働き方ですよね。
入庁当初から忙しい職場に配属され、長時間労働を経験した新人は同期に対して「残業○○時間だった~」「え、電車で帰ってるの?いいな~」と、忙しい自慢をします。それを真に受けてしまった若手公務員は早く帰っている自分の働き方に疑問を抱いたり、「よし、俺もバリバリ残業するぞ!」と誤ったモチベーションが湧いてしまう。そうやって長時間労働は格好いい、組織に貢献していると間違った認識する若手職員を作りだしてしまうのではないでしょうか。
また、若手職員は上司や対外的な仕事の依頼に対して、必要であれば残業をしても応えようとします。それ自体は悪いことではありません。しかし、相手には長時間労働による成果であることは理解されにくいのです。次に同じ仕事を振るときも「前任者はこれくらいの〆切でもできたのだから貴方もできるでしょう」と考えます。
そうやって、次の担当者にも長時間労働が引き継がれるといった負のスパイラルが続いてしまうのです。
長時間労働の弊害
長時間労働で良いことといったら、個人的に給与に超過勤務手当が上乗せ支給されることくらいでしょうか。実際は個人にとっても組織にとっても弊害の方が多いです。
職員の疲労
寝不足などの生活リズムの乱れによる心身の疲労。この影響は本人だけの問題ではありません。夫が毎日帰りが遅ければ残った妻はひとりで育児や家事をこなさなければなりませんから、ワンオペ育児の原因にもなります。
仕事の生産性があがらない
寝不足では集中力は下がります。元気であれば30分でできる仕事に何時間もかけてしまい、残業となる。アイデアを求められる仕事においても、頭が働かず時間ばかり経過して残業となる。成果の質も下がる。といった悪影響があります。
人件費(超過勤務手当)がかかる
これは組織の問題となります。残業が多いほど人件費である超過勤務手当を払う必要があります。役所の一般財源(事務事業に充てられる財源)のうち、人件費などの経常的な経費が増えると、ほかに必要とされる事業に予算を回すことが難しくなります。財政的に弾力性を失ってしまうのです。いわゆる経常収支比率が高くなるということですね。
また、公務員ですから人件費の原資は住民の税金です。長時間労働に対して何も対策を行っていないと、税金を支払う住民からの信頼に影響しますよね。
長時間労働こそが組織貢献という誤解が蔓延する
前述しました忙しい自慢をする新人の例のように、「残業=えらい」という誤解が組織内に蔓延してしまいます。このような誤解は「俺が若いころは~」といった武勇伝として世代を超えて引き継がれてしまいます。
長時間労働を減らすことのメリット
心身の充実・プライベートの充実
定時で帰ることができればそプライベートに充てる時間が増えますよね。自分のスキルアップにつながる勉強や自己啓発、趣味に使う時間、ジムで体を動かす、家族や友人と過ごす時間も増えます。心身ともに健康的になります。
仕事の生産性があがる
これまで残業が常態化していた人が定時までに仕事を終わらせるためには業務を工夫しなければなりません。どうすれば効率化するかという視点が生まれますので、仕事の成果としても生産性があがると考えます。
組織として弾力的に事業を遂行できる
これまで超過勤務手当として支払っていた予算が減れば相対的に事業に回せる予算が増えるということです。また、業務が効率化されれば、少ない人員で回せることになりますから、組織として重点的に行いたい事業に人材を柔軟に配置することができるようになります。
まとめ 「毎日が定時退庁日」を実現するには
長時間労働を減らし、毎日定時で帰る(=毎日が定時退庁日)には、人事制度の見直しやテレワーク、モバイルワークといった取組を変えるだけではなく、職員の意識を「長時間労働=悪。組織に貢献しないもの」と根本から見直す必要があります。
では、どうすれば人の意識は変わるか…。言っておきながら、正直この場では具体的な答えを出すことができません。どこの職場でも苦労していることです。
そこで、当ブログでは「業務を効率化する方法」や「早く帰るとこんなにいいことがある!」といった定時退庁の動機付けのための情報を発信してまいります。
時間内に仕事をこなして、さっさと帰る若手公務員を増やしたい。そして、現在若手公務員の方々が出世して中堅職員、管理職となった時、長時間労働は過去のものとなり、週1回の定時退庁日なんて無くなっている。
当ブログでは、そんな将来に微力ながら貢献したいと思いから、ブログ名を「毎日が定時退庁日」としました。
今後も若手公務員の抱える”無駄な残業、無駄な緊張、無駄な不安、無駄な憂鬱”を減らし、仕事へ向き合いやすくする記事を書くことを目指します。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。