【若手公務員の登竜門】東京都主任試験の難易度とおすすめの勉強方法

この記事では、出世を希望する若手公務員が最初に越えなければならないハードル、「主任試験」について都庁の例を使ってご紹介します。

採用試験を合格したばかりの方からすれば、「勉強から解放されたと思ったらまた勉強しなきゃいけないの?」って思いますよね。主任試験は昇任するにあたって最初に越えなければならないハードルです。都庁では主任試験に合格しない限り、主事から昇任することはありません。

しかし、主任試験は公務員試験と異なり、受験勉強に専念することはできませんよね。仕事をしながら限られた時間の中で効率的に勉強をすることがポイントです。

そこで、今回は新人や若手公務員が知っておきたい主任試験の難易度と勉強方法等について解説します。試験対策の参考としていただければ幸いです♪

そもそも主任とは?

特に高度な知識又は経験を必要とする係員の職(東京都人事委員会)

責任の重さは主事と変わりありません。職場の中核となって、新人や経験の浅い職員の育成(チューターという育成担当を担うことが多いです)や他部署との折衝・調整などを通じ課長代理(係長)を補佐する役目が期待されています。

主任になるための試験は主任選考AとBの2種類があります。主任選考Aは、1類Aで入都した場合は3年目、Ⅰ類Bで入都した場合は5年目に受験することができます。年齢40歳未満であることです。一方、主任選考Bは1級職在職13年以上かつ年齢40歳以上の方が対象です。

主任に昇任すると給料は1級あがり2級となります。また、他局への異動の対象となります。主任1年目に他局に異動することを前期異動、自局で昇任し、主任3年目で他局に異動することを後期異動といいます。

具体的にどのように給与が上がっていくか気になる場合は、こちらの記事もご覧ください。

主事から主任への昇任で給与(給料+手当)は2万円弱は増えると試算しています。

【都庁の例】地方公務員の管理職と非管理職の収入はどれくらい?【年次別に試算】

主任試験の難易度

試験の合格率は30%程度

主任選考Aの平成30年度の合格率は34.5%です。1,337人が受験し461人が合格しました。これは事務職の合格率ですが、他の職種もおおむね30%程度です。

30%といっても、同期の30%が合格するのかといったらそうではありません。たとえば、平成30年度の受験者には受験資格を得て1年目の職員のみならず前年度までの不合格者も含めての合格率です。一発合格する割合はさらに低くなります。一説には同期の中で一発合格する人の割合はせいぜい20%といわれています。

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試験のボーダーラインはある?

試験は筆記考査(択一式、論文)と勤務評定によって合否が決まります。このうち、ボーダーが明らかなのは択一式のみです。択一は平均点がボーダーです。平成30年度の事務職の平均は55点満点で34.7点、つまり35点がボーダーということです。

択一が平均点以下の場合は論文は採点されません。また、択一は高得点をとれば良いというわけではありません。択一の成績はその後の選考に影響しません。つまり、択一で満点をとっても論文の出来や勤務評定次第では合格しないこともあります。

合格しやすい局はあるの?

受験者の多い(職員の多い)部署は合格者が多いのは当然です。主税局、教育庁といった局ですね。一方、合格率でみると局によって差はあります(公表はされていません)。

しかし、合格率が高い理由は、必ずしもその部署に優秀な若手職員が多いというわけではありません。また、特定の部署で働いているだけで合格しやすいというわけではありません。出先に配属されていても合格する人は合格しますし、枢要部署(政策企画局や財務局など)の人でも落ちる人はもちろんいます。

部署によって合格率が異なるのは、組織として主任試験への対策にどれだけ熱を入れているかという違いです。

例えば、主税局。局として主任試験への対策が充実しています。受験対象者への勉強会、模擬試験、管理職による模擬論文の採点等、局をあげてサポートしています。他の局でもそれぞれ独自の試験対策を展開していますし、部や課単位でも試験対策を展開している部署もあります。


主任試験の内容

都庁の場合、選考方法は筆記考査(択一試験及び論文試験)、それから勤務評定です。市役所によっては面接もありますよね。

択一式問題は何問?どんな分野から出題される?

択一式試験は、5肢択一で55問です。分野は以下のとおりです。

  • 統計データ分析
  • 憲法
  • 行政法
  • 地方自治法
  • 地方公務員法
  • 都政実務
  • 都政事情

なお、受験資格の発生する前年度に択一試験のみの前倒し受験が可能です。択一試験は合格すると3年間は免除されますので、前倒し受験で択一を合格すれば翌年度は論文試験のみとなり、論文の対策に専念できます。ちなみに、択一が免除される3回のチャンスを連続して不合格となることを「三振」といいます。

論文試験の内容は?

論文試験では、1500~2000字程度の論文を2時間で作成します。問題意識、論理性、表現力などが問われる試験です。

職場もの(職場における事例問題)と都政もの(都政事情に関する問題)から選択して回答します。

勤務評定も重要とされていますので、必ずしも筆記試験の出来が良ければ合格するというわけではありませんが、論文の出来が合格を左右します。

主任試験への対策

勉強会には参加した方がよい?

初めて主任試験に臨む方は、自局に勉強会があれば参加しましょう。勉強会では過去問や再現論文を数多く入手できるからです。また、勉強会では近年の出題傾向など分析しています。公務員試験でもそうですが、同じ論文のテーマが何年も続けて出題されることはありませんよね。近年の出題状況を把握することで効率的に対策しましょう。

とはいえ、勉強会に参加しなければ合格しないわけではありません。勉強会に参加できない、したくない方もいるでしょう。その場合でも、知合いを通じて他局の勉強会資料を融通してもらうことをおすすめします。

他局の勉強会資料を多く入手することは論文対策においてメリットがあります。論文対策にあたっては事前にいくつかのテーマに沿って論文を書いてみることが必要です。一度も書いたことのない方が一発合格することは滅多にありません。自局の模擬試験で1本、他局の模擬試験で数本を解いておくとよいです。

択一試験の勉強方法

公務員試験を経験してきた方なら問題ないでしょう。地方公務員の昇任試験用の問題集が数多く発売されています。都庁の過去問を使った問題集も多いです。

都庁第1本庁舎2階のくまざわ書店には昇任試験用のコーナーがありますので、ひととおり揃えることができますし、先輩職員や先に合格した同期から譲ってもらうのもよいですね。

都政実務については「職員ハンドブック」の内容から出題されます。昔は都政実務の対策としてはハンドブックを熟読するのが一般的でしたが、今では職員ハンドブック対応の問題集も存在します。

法律系の問題集と都政実務の問題集を数回繰り返し解くことで択一式については問題ないでしょう。

都政事情については「都政新報」の主任試験対策において予想問題が数多く掲載されますので参考としてもよいでしょう。

論文試験の対策。「型」を準備しましょう

論文対策として、まずは合格者の再現論文を入手しましょう。それらを読むことでだいたいの合格水準を理解することができます。(ただし、合格者の再現論文は盛っていることもあります。「ここまで書かないと受からないの!?」と自信を失くす必要はありません)

できれば不合格者の再現論文も読んでおくと、何が良くなかったのかという点を学ぶ上で参考となります。

論文試験には合格する「型」があります。たとえば、どんな事例問題であっても、3つの課題や問題点をあげ、それに対応する3つの解決策を書くといった型です。やみくもに自分の思いを書き連ねる作文では、どんなに良いことを書いていても評価されないのが現状です。

近年の出題傾向をみると、あらかじめ準備してきたことを書くだけでは通用しない問題となっていますが、自分の書きやすい「型」を準備しておくことで当日は問題に沿った内容を「型」にはめていくといった書き方がおすすめです。試験時に構成を考えるときに時間を省略できるからです。

論文は「職場もの」と「都政もの」どちらを選択すべき?

以前からこのような声をよく聞きます。

  • 都政ものは準備していたテーマを外すと何も書けなくなる。職場ものを選択すべき
  • 職場ものは差が付きにくい
  • 都政ものは選択する人は少ないから職場ものより受かりやすい
  • 職場ものは年々、事例が複雑化している

5年以上前、ある局の合格者論文を見る機会があったのですが、合格者のほとんどが職場ものを選択していました。それが最近、別の局(官房系)の合格者論文を見せてもらったところ、職場ものと都政ものを選択する割合はちょうど半々でした。

これは局の勉強会での助言などによるのかもしれませんが、近年は都政ものを選択する人が多くなってきたことは確かかと。これには職場ものの難易度が上がってきたことも影響しているかもしれません。

正直、どちらが合格しやすいかはわかりません。どちらも一度書いてみて、どちらが自分にとって書きやすいかで選択することをおすすめします。

管理職試験は職場ものは出題されません。管理職試験を視野に入れている方は、都政に関する課題や解決策のレパートリーを今から増やしておくという意味で主任試験は都政ものを準備するという考え方もあるでしょう。

ちなみに、以下の記事で職場もの対策におすすめの本を紹介しています。あわせてお読みいただけると幸いです。

【東京都庁】主任試験の論文対策「職場もの」におすすめの対策本は?

事前に書いた論文は添削してもらった方がよい?

一度は添削してもらうことをおすすめします。自分では完璧!と思った論文でも改善すべきポイントは多いものです。1人で論文を書いていると「この内容で本当に受かるのかな…」といった不安がいつまでも消えません。

勉強会に参加していれば模擬試験がありますから添削される機会もあるでしょう。勉強会に参加していない方は所属の管理職などにお願いしましょう。管理職としては自分の部署で合格者がたくさん出ることは自分の評価につながりますから拒むことはないでしょう。

指摘されることを恐れる必要もありません。添削をお願いされた側としては、何も指摘する箇所がないと自分の面子が立ちません。どんな素晴らしい論文でも初回は指摘してみたくなるものです。

初回から指摘箇所のない論文を書くことが重要ではありません。添削を受け、繰り返し修正していくことで自分の書きやすい型が身についていったり、具体性のある解決策のレパートリーが増やしていくことの方が重要です。当然ですが、事前の論文よりも試験本番で良い論文を書くことが目的ですからね。

ただし、あまりたくさんの方に同じ論文を添削してもらうのはおすすめしません。正直、管理職でも指摘内容が分かれることが多々あります。ある人には褒められたポイントをある人からはダメ出しされてしまったら、誰を信じればよいのか…となってしまいますよね。


勤務評定について

勤務評定の配分は大きいといわれます。論文試験で差がつかない論文しか書けなかったとしても合格する可能性は当然あります。逆にいうと素晴らしい論文を書いたとしても勤務評定が悪いと合格しないということです。

勉強している受験者の方々は論文もしっかり対策しているため、論文の「型」や論文の肝となる「解決策」も同じような内容となることが多いです。

そのような場合、論文の採点にあまり差がつきません。採点者としては読みにくい論文や出題の趣旨に沿っていない内容の論文などを減点していき、最終的には勤務評定の差が合否を左右するということです。(推測です…)

なお、勤務評定は日頃の仕事の延長という考えを持っておきましょう。試験勉強に集中するあまり、担当業務をおろそかにしてしまっては本末転倒です。

おわりに

主任試験を受験される方の多くは、忙しい日々を過ごしていることでしょう。限られた時間のなかで対策しなければなりませんから効率的に準備したいところです。あらためておさらいしておきましょう。

[box03 title=”まとめ”]
  • 主任試験の合格率は例年30%程度。対策しないと合格は難しいです
  • 択一式を前倒しで合格しておき、論文対策に専念しましょう
  • 択一式は過去問対策で十分
  • 論文は第三者の添削を受けましょう
  • 勤務評定は日頃の勤務態度から[/box03]

読者の方が主任試験に合格し新たな職場でご活躍されることを願っております。ここまでご覧いただきありがとうございました♪