地方公務員の年休取得日数はどれくらい?円満に休むための方法

公務員を志望する皆さんにとって、就職先の選択にあたって休暇の取りやすさは大きな判断基準の一つではないでしょうか。

今回の記事では、都庁の例をベースに地方公務員は休暇をどれくらい取っているのか、また職場で円満に年休を取得する方法について紹介します。就職先の自治体を選ぶ上でこの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

そもそも休暇とは

休暇とは、職員が労働の義務がある日において、一定の事由のある場合に、職員が任命権者の承認を得て、勤務することを一時的に免除される制度です。休日とは、労働者が労働の義務を負わない日を指します。似ていますが別の制度です。

休暇の種類

休暇にはいくつかの種類があります。都庁の例でいうと、年次有給休暇(以下、年休という)・病気休暇・特別休暇・介護休暇・介護時間・超勤代休時間といった種類があります。地方公務員であれば基本的に同じと考えてよいでしょう。

今回の記事では、このうち最もポピュラーな「年休」を取り上げます。ちなみに、年休と同様にすべての職員が対象となる「夏季休暇」については上記の特別休暇にあたります。夏季休暇は年間取得日数は5日で、全て消化することを組織として目標とする役所が多いです。取得をしなくても本人にペナルティはありませんが、部下の取得率が管理職の評価に影響することもあるので積極的な取得を推奨されます。そのため、どの自治体に就職してもほぼ5日は取得できると考えます。

年休について

定義については以下のとおりです。

職員の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ることを目的として、原則として職員の請求する時季に与える年間一定日数の休暇新規採用職員は、採用の月によりそれぞれの日数が与えられる(4月採用の場合は、15 日)。勤続2年目以降の職員には、毎年1月1日(学校職員は、毎年4月1日)に一律 20 日与えられる。

 平成30年度 東京都人事行政の運営等の状況 より

入庁初年度は15日、2年目以降は20日が付与されます。取得の方法は日単位でも良いし、時間単位または半日単位の取得もできます。

付与された年休日数のうち、取得をしなかった残りの日数については20日の範囲内で翌年度に繰越すことが可能です。

つまり、入庁1年目の4月から12月の間に5日の取得をした場合、15日-5日=10日は1月以降に繰越されます。1月以降は繰越10日+20日=30日が取得限度です。入庁2年目に5日の年休を取得すると残日数は30-5=25日です。ここで翌年に繰越されるのは25日ではなく20日です。5日分は消滅します。そして、翌年の取得限度は繰越20日+20日=40日です。入庁3~4年目になると多くの職員は取得限度40日ということです。毎年20日分を消化することはなかなか難しいですから。

実際の取得日数はどれくらい?

都庁の例(平成29年1月~12月)では、知事部局における平均取得日数は14.6日でした(「平成30年度 東京都人事行政の運営等の状況」による)。取得日数を付与日数20日で割った取得率は73%ですね。

民間企業においては平均付与日数は18.2日、平均取得日数は9.3日、平均取得率は51.1%でした(平成30年就労条件総合調査による)。

民間企業と比べると、年休を取りやすい環境といえるでしょう。

ちなみに知事部局のほかには、行政委員会等が12.6日、交通局が18.4日、水道局が17.2日、下水道局が16.8日、学校が14.4日です。出先機関を多く抱える公営企業系の部署の取得率が高いという傾向が見て取れます。

ただし、当然ではありますが人によってはほとんど休んでいない人もいるのが実態です。


都道府県別の年休平均取得日数

都道府県別取得日数

その他の道府県も含めた一覧は以下のとおりです。いずれも平成29年1月~12月における年休の平均取得日数です。任命権者ごと(知事部局・教育委員会・警察本部など)の平均取得日数を公表している場合は知事部局の値を掲載しました。なお、「」の自治体について公表されていません。

都道府県 年間平均取得日数
北海道 11.2
青森県 11.0
岩手県 11.8
宮城県 10.8
秋田県 11.6
山形県
福島県 10.0
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県 11.2
千葉県 11.4
東京都 14.6
神奈川県
新潟県 11.0
富山県 11.0
石川県 8.9
福井県 9.1
山梨県 8.6
長野県 10.66
岐阜県
静岡県 10.8
愛知県
三重県 14.4
滋賀県 12.0
京都府 10.1
大阪府 12.1
兵庫県
奈良県 10.0
和歌山県 11.4
鳥取県 11.1
島根県 10.2
岡山県 12.7
広島県 11.99
山口県 13.2
徳島県
香川県 8.7
愛媛県 9.9
高知県 12.1
福岡県
佐賀県
長崎県 11.4
熊本県
大分県 13.5
宮崎県 12.22
鹿児島県
沖縄県 13.0

平均取得日数を公表している自治体のなかで最も少ないのは山梨県の8.6日、最も多いのは東京都の14.6日、全自治体の平均値を計算すると約11日です。平均値では民間企業を上回る結果でした。

個別の市町村の年休取得の状況を知りたい場合

市町村の年休取得状況を知りたい場合は、「●●市人事行政の運営等の状況」で検索すると自治体の公表資料を参照できます。

「人事行政の運営等の状況」とは、地方公務員法第58条の2に基づき、各自治体が条例を定め、任命権者が職員の任用、人事評価、給与、勤務時間その他の勤務条件、休業、分限及び懲戒、服務、退職管理、研修並びに福祉及び利益の保護等を長に報告するものとして毎年公表しています。本記事はそのうちの「勤務時間その他の勤務条件」として自治体が公表している情報に基づいています。

ただし、年休の平均取得日数などの個別の情報を報告に含めているかどうかは各自治体の定めによりますので、公表していない自治体もあります。

地方公務員法抜粋(人事行政の運営等の状況の公表)
第五十八条の二 任命権者は、次条に規定するもののほか、条例で定めるところにより、毎年、地方公共団体の長に対し、職員(臨時的に任用された職員及び非常勤職員(第二十八条の五第一項に規定する短時間勤務の職を占める職員を除く。)を除く。)の任用、人事評価、給与、勤務時間その他の勤務条件、休業、分限及び懲戒、服務、退職管理、研修並びに福祉及び利益の保護等人事行政の運営の状況を報告しなければならない。
2 人事委員会又は公平委員会は、条例で定めるところにより、毎年、地方公共団体の長に対し、業務の状況を報告しなければならない。
3 地方公共団体の長は、前二項の規定による報告を受けたときは、条例で定めるところにより、毎年、第一項の規定による報告を取りまとめ、その概要及び前項の規定による報告を公表しなければならない。

年休を円満に取得するために

年休を取得しやすいかどうかは、職場の空気に左右されるところが大きいです。管理職や直属の係長などが普段から計画的に年休を取得している職場であれば休みやすいでしょう。問題は、上司がまったく休もうとしない職場です。そんな職場では働きたくないと思いますが、職場は希望することはできても選ぶことはできません(希望が叶えばよいのですが…)

昔は休まずに働くことが美徳という文化がありました。今のベテラン職員の方にもその考えが根付いておりなかなか休まないという人もいますよね。休まない文化は世代交代が進めば解消できる問題でしょう。是非若手公務員の方が部下をもった際は自ら積極的に計画的な年休をとり、休みやすい職場を実現していただければ幸いです。

とはいっても、「今、休めない環境を何とかしたい!」という方も当然いるでしょう。

円満に休みをとるために必要なことを紹介します。

自分の抱えている仕事を共有すること

別の記事で情報共有の重要性について解説しました。万が一、自分が今日死んだとしても明日も業務が滞りなく回るように、日ごろから係の仕事の状況を共有しておきましょう。

【トラブル解決・生産性の向上に】若手公務員が理解すべき情報共有の重要性

自分の仕事の進捗状況がオープンであれば、休んでも業務的に差支えない日に休んでも誰も文句は言えないですよね。年休を届け出る時に上司から「業務的には休んでも大丈夫なのか?」と突っ込まれることもありません。

また、進捗状況とともに担当業務のマニュアルやデータのありかなども合わせて確実に共有しましょう。休みの間に対応が必要となった時に他の職員が代わって行うことも想定するということです。机の上に書類が散乱して必要な書類が見つからないということがないように年休の前日は机を片付けるという習慣を付けましょう。

計画的に休みを取ること

例えば、自分が県庁に勤めていて各市町村に調査を依頼する仕事をしているとします。調査を照会すると内容について質問もされますよね。調査を依頼だけしておいて休んでしまうと、自分が休んでいる時に問い合わせが集中する恐れもあります。

他の職員と情報を共有し、休みの間の引継ぎをしっかりしていても、問い合わせが殺到してしまうと代わりに対応してくれる職員の時間を奪ってしまいます。

業務のスケジュールを考慮して年休を取得する日を計画しましょう。

年休は必ず前日までに申請すること

事前に申請することが原則です。自分や家族の急病、忌引きといったどうしても休まなければならない場合を除いて、前日までに申請しましょう。

社会人としてやってはいけないことは飲み会の翌日の当日休です。自己管理や仕事に対する姿勢を疑われてしまいます。楽しいみ会で気をよくして「明日休んでいいっすかー?」は仮に上司がOKしたとしても、ちゃんと出勤した周りの職員からの印象は良くありません。お酒に弱く、ひどい二日酔いとなることが想定されるのであれば前日までに申請しましょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか。都庁の例では、年休(平均14.6日)と夏季休暇(最大5日)を合わせるとカレンダーの休日のほかにも20日近く休むことができる計算です。その他の自治体も年休は平均11日くらい取得しています。

年休は、その目的にあるように職員の心身の疲労を回復させるために必要なものです。一昔前は休まないで働くことが美徳のように考えられていた節があります。しかし、最近では、ライフワークバランス、働き方改革が推進されており、年休の少ない組織においては管理職のマネジメント能力が疑われる傾向があります。そのため、毎年12月になると年休を積極的に取得するようにとお達しが来る役所も多いと思います。

これから公務員となる方も1年目から積極的に年休の取得を心がけましょう。

ちなみに、夫は地方公務員時代で最も多く年休の取得をした年は、本庁勤務ながら円満に19.5日も休みました。年休を取りやすい職場、取りにくい職場はあるとは思いますが個人の意志によるところが大きいのだと思います。夫の場合は、年度末・年度初めの繁忙期は年休取得はなし。比較的落ち着いた夏などに積極的な取得をしていました。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。この記事が読者の方に少しでもお役に立てれば幸いです♪